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とにかく面白いおすすめの小説95作品を紹介する

このページではとにかく面白いオススメの小説を紹介していきます。小説が大好きな私が厳選した珠玉の作品たちです。

チルドレン(伊坂幸太郎)

「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々―。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。

日本が誇る天才作家伊坂幸太郎の短編集。家裁調査官「陣内」の周囲で起こるちょっと変わった物語。とにかく伊坂幸太郎が生み出した最強のキャラクターである陣内を堪能できる作品です。無茶苦茶だけれどカッコいい彼の姿は非常に魅力的です。続編のサブマリンもしっかりと面白い。

陽気なギャングが地球を回す(伊坂幸太郎)

嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった…はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ!奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス。

伊坂作品からもうひとつ。人気シリーズともなっている陽気なギャングシリーズの1作目。軽妙でユーモア全開の会話と秀逸な伏線回収がたまりません。強盗という重い犯罪を描いているのにこの軽やかさ。巧みな構成力は伊坂作品の真髄ともいえる作品でしょう。

西の魔女が死んだ(梨木果歩)

中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も、もちろん幸せも…。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。

ちょっぴり切なく、綺麗で素敵な物語です。田舎の風景が目の前に広がっているかのように感じるほど丁寧な情景描写が素晴らしいです。魔女ことおばあちゃんの言葉ひとつひとつが胸に響きます。私たちが忘れがちな大切なことを思い出させてくれる一冊。

青い鳥(重松清)

村内先生は、中学の非常勤講師。国語の先生なのに、言葉がつっかえてうまく話せない。でも先生には、授業よりももっと、大事な仕事があるんだ。いじめの加害者になってしまった生徒、父親の自殺に苦しむ生徒、気持ちを伝えられずに抱え込む生徒、家庭を知らずに育った生徒―後悔、責任、そして希望。ひとりぼっちの心にそっと寄り添い、本当にたいせつなことは何かを教えてくれる物語。

吃音の先生が登場する連作短編集。重松清が「初めてヒーローを書いた」と言っていました。 重松清の凄みを再認識させられる作品です。この不格好で不器用なヒーローを必要としている子供たちに是非とも読んでほしい。そしてどの子も間に合うことを願っています。

風が強く吹いている(三浦しをん)

箱根駅伝を走りたい―そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何?走るってどういうことなんだ?十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく…風を感じて、走れ!「速く」ではなく「強く」―純度100パーセントの疾走青春小説。

箱根駅伝に挑む爽やかな青春ストーリー。登場人物の思いをしっかりと描くところ三浦しをんさんの愛を感じます。一つの物事に本気で真剣に取り組むひたむきさと、これでもかというほどの熱を持ったパワーが素晴らしい作品です。

私はいったい、何と闘っているのか(つぶやきシロー)

甘えも嫉妬も憤りも悔しさも、すべてを強がりのオブラートに包み込んで、男は深夜、なじみの定食屋のカツカレーを全力で喰らい尽くす。きょうも、妻が、娘が、息子が待っているはずの我が家が遠い―。伊澤春男、45歳。スーパー勤務。一見平凡な日常は、きょうも彼の脳内で戦場と化す。つぶやき芸の極北を行く作者が満を持して描いた七転八倒中年男のサバイバル人生劇場。

芸人つぶやきシローの2作目となる小説。すごいです。つぶやきシローという人間がそのま ま文章になったかのような作品。頭の中で渦巻く面倒くさい感情、言葉にするのが難しい思 いを物語に落とし込んでいます。人間が持つ滑稽さ、なんともいえない哀愁が深い味わいを 生み出しています。つぶやきシローにしか書くことができない唯一無二の作品。

カラフル(森絵都)

生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになるのだが…。不朽の名作ついに登場。

優しくて、いつでも涙腺に強烈な刺激を与えてくる作品。ファンタジーな設定、根幹にあるテーマ、シンプルなタイトル。すべてが作者が伝えたいメッセージにつながっている素晴らしさ。空想と現実を行き来しながら毎日を楽しく生きるヒントを与えてくれます。

家日和(奥田英朗)

おかしくて切ない、〈在宅〉小説誕生! ネットオークションにはまる主婦。会社が倒産し主夫となった営業マン。ロハスに凝る妻に辟易する小説家…。ちょっとズレても家庭は続く。夫と妻の心の機微を軽妙に描きだす、6つの物語。

ありふれた家族の日常の些細な出来事をエンターテイメントに昇華しています。ほほえまし く、温かい気持ちになれる短編集です。こんな小さな話をこれだけ面白く描くことが出来る のかと感心してしまいます。少し疲れた仕事終わり、癒されたいときに読みたい一冊です。

イン・ザ・プール(奥田英朗)

どっちが患者なのか? トンデモ精神科医伊良部の元を訪れた悩める者たちはその稚気に驚き、呆れ…。水泳中毒、ケータイ中毒、ヘンなビョーキの人々を描いた連作短篇集。

奥田英朗の人気シリーズ「精神科医伊良部」の第一作目。伊良部のキャラクターとどこか真 理をついているかのようなハッとさせられる発言が魅力。続編の「空中ブランコ」も面白い。 そのあとに出た長編の「町長選挙」はちょっと残念な仕上がりでした。

カラスの親指(道尾秀介)

人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは?息もつかせぬ驚愕の逆転劇、そして感動の結末。「このミス」常連、各文学賞総なめの文学界の若きトップランナー、最初の直木賞ノミネート作品。第62回日本推理作家協会賞受賞作。

騙されたい、ミステリーやトリックに飢えている、といった方にお勧めなのがこちら。軽妙な会話と言葉遊びに、魅力的な登場人物と全てを楽しめる作品。そして騙しの天才である道尾秀介が仕掛けているトリックにまんまと騙された後の心地よさ。面白すぎて読み終わるのが名残惜しかった小憎らしい傑作。

レヴォリューション No.3(金城一紀)

「君たち、世界を変えてみたくはないか?」オチコボレ男子高に通い、死んだような毎日を送っていた「僕たち」は生物教師ドクター・モローの言葉で突如生き返り、世界を変えるために行動を開始する。その方法は―難攻不落のお嬢様女子高の学園祭に潜入してナンパをすること!果たして「僕たち」の潜入作戦は成功するのだろうか!?革命的おバカストーリーが炸裂する、ザ・ゾンビーズ・シリーズ第1弾。

狂おしいほどの青春がここに詰まっています。無鉄砲な男子高校生達が繰り広げるなんとも痛快なドタバタ劇。くだらなくて笑える、そして泣ける熱い物語。読んでいるうちに若いエネルギーをもらっている感覚になれます。ふとした瞬間に読み返したくなる一冊です。

神様からひと言(荻原浩)

大手広告代理店を辞め、「珠川食品」に再就職した佐倉凉平。入社早々、販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動となった。クレーム処理に奔走する凉平。実は、プライベートでも半年前に女に逃げられていた。ハードな日々を生きる彼の奮闘を、神様は見てくれているやいなや…。サラリーマンに元気をくれる傑作長編小説。

異動先での苦情係での奮闘をコミカルに描いているユーモアたっぷりのお仕事小説。篠崎の強烈なキャラクターが気持ちよく、スカッとした後味の読後感を楽しめる。タイトルも秀逸。

サラバ!(西加奈子)

僕はこの世界に左足から登場した―。圷歩は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。その後、父母、そして問題児の姉とともに、イラン革命のために帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。幼稚園、小学校で周囲にすぐに溶け込めた歩と違って姉は「ご神木」と呼ばれ、孤立を深めていった。そんな折り、父の新たな赴任先がエジプトに決まる。メイド付きの豪華なマンション住まい。初めてのピラミッド。日本人学校に通うことになった歩は、ある日、ヤコブというエジプト人の少年と出会うことになる。

後半からの展開は時間が経つのを忘れて一気読み。言葉一つ一つが突き刺さってくるかのようなパワーを感じました。面倒くさい主人公と自分を重ね合わせ、ついつい感情移入してしまう。ダメな人間にもしっかりと希望の手を差し伸べてくれる西加奈子の優しさと愛に救われた思いです。

秘密(東野圭吾)

妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密”の生活が始まった。映画「秘密」の原作であり、98年度のベストミステリーとして話題をさらった長篇、ついに文庫化。

たぶん日本で最も有名な作家である東野圭吾の最高傑作ともいえる名作。とにかく多くの人に読んでもらいたい作品です。ただの入れ替わりものに収まらない構成の素晴らしさ。後半からの展開とラストにわかるタイトルの意味。その秘密に心を揺さぶられることになります。

ナミヤ雑貨店の奇蹟(東野圭吾)

悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか?3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くが…。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?

ファンタジーで不思議な世界観の中で非常に心地よい時間を読者に与えてくれる一冊。読後の満足感を与えてくれる気持ちの良いラストが素晴らしい。小憎らしいほどに伏線を繋げてくる東野圭吾の実力を感じさせる作品です。

虐殺器官(伊藤計劃)

9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。

近未来を舞台にしたSF作品。暗殺計画を遂行していく主人公の姿とその目に移る現実を通して読者に難解なテーマを投げかけてきます。人について、命について、哲学めいたものを感じる作品。全体を通して非常に完成度の高い濃厚な一冊。

クライマーズ・ハイ(横山秀夫)

1985年、御巣鷹山に未曾有の航空機事故発生。衝立岩登攀を予定していた地元紙の遊軍記者、悠木和雅が全権デスクに任命される。一方、共に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相剋、親子の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とは―。あらゆる場面で己を試され篩に掛けられる、著者渾身の傑作長編。

1985年に起きた日航機墜落事故を題材にした作品。主人公の葛藤やそれぞれが抱いている思いの描写に心がゆさぶられました。圧倒的な臨場感と熱量で目頭が熱くなる、読み応え抜群の一冊です。

ストロベリーナイト(誉田哲也)

溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された。警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子は、これが単独の殺人事件で終わらないことに気づく。捜査で浮上した謎の言葉「ストロベリーナイト」が意味するものは?クセ者揃いの刑事たちとともに悪戦苦闘の末、辿り着いたのは、あまりにも衝撃的な事実だった。人気シリーズ、待望の文庫化始動。

グロテスクな描写にぞっとしてしまうも、先が気になって目が離せなくなります。胸糞悪くなりながらもグイグイ物語の中に引き込まれていく魔力を秘めた作品。残虐で生々しく、そしてとてつもなく面白いです。

明るい夜に出かけて(佐藤多佳子)

今は学生でいたくなかった。きっかけになったトラブルはある。でも、うまく説明できないし、自分でも整理がついていない。実家を出て、バイトしながら、まったく違う世界で、自分を見つめ直すつもりだった。「歴史を変えた」と言われる伝説のあのラジオ番組が小説内でオンエア!「青春小説」に名作がまた誕生した。

コミュニケーションをうまく取れない若者がアルコ&ピースの深夜ラジオをきっかけに少しずつ世界を広げていく物語。なんともいえな空気感がたまらないです。登場人物がいいやつばかりで、ついつい応援したくなる。作者のラジオ愛がバシバシ伝わってくるような作品で す。

恋文の技術(森見登美彦)

京都の大学院から、遠く離れた実験所に飛ばされた男が一人。無聊を慰めるべく、文通修業と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。文中で友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れるが、本当に想いを届けたい相手への手紙は、いつまでも書けずにいるのだった。

書簡小説。電車内で読んでしまうとつい吹き出してしまうのでご注意ください。まあまあボリュームがありましたが、ニヤニヤしながらサクサクと読み進められました。中盤からどんどん面白くなってきて、最後に訪れる幸福感も素晴らしい。

コンビニ人間(村田沙耶香)

「いらっしゃいませー!」お客様がたてる音に負けじと、私は叫ぶ。古倉恵子、コンビニバイト歴18年。彼氏なしの36歳。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる。ある日婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて…。現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。

普通とは何か、というある種普遍的なテーマを問いかけてくる作品。様々な価値観が行き交う現代社会の中で私はどのように生きていくべきなのか。圧力をかけてくるマジョリティへの敵対心、作者のロックンロールを感じました。

羊と鋼の森(宮下奈都)

高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。ひたすら音と向き合い、人と向き合う外村。個性豊かな先輩たちや双子の姉妹に囲まれながら、調律の森へと深く分け入っていく―。一人の青年が成長する姿を温かく静謐な筆致で描いた感動作。

ピアノの調律師のお話。繊細で綺麗な文体がとても気持ちのいい作品でした。一貫して凛とした澄み切った空気感を作り続ける文章力に驚かされます。物語に大きな山場があったりするわけではなく、決して派手な作品ではないのですが、胸に沁み入るような静かな感動で包み込んでくれます。

笑うな(筒井康隆)

タイム・マシンを発明して、直前に起った出来事を眺める「笑うな」など、ユニークな発想とブラックユーモアのショートショート集。

筒井康孝によるショートショート集。笑うなと言われてもこれは笑っちゃいます。ブラックでコミカルな笑いを存分に楽しむことが出来ます。バラエティに富んだ作品が集まっているので最後まで飽きずに読み切りました。

永遠の0(百田尚樹)

「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、1つの謎が浮かんでくるーー。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。

歴史に無知な自分が恥ずかしくなると同時に涙が止まらなくなるほど胸が苦しくなります。戦争の残酷さ、無慈悲な特攻の現実を突きつけられます。ミステリーのような形式で戦争小説を書くことが出来る凄さ。現在の平和を享受できていることの有難さを再認識します。

昨夜のカレー、明日のパン(木皿泉)

7年前、25歳で死んでしまった一樹。遺された嫁・テツコと今も一緒に暮らす一樹の父・ギフが、テツコの恋人・岩井さんや一樹の幼馴染みなど、周囲の人物と関わりながらゆるゆるとその死を受け入れていく感動作。本屋大賞第二位&山本周五郎賞にもノミネートされた、人気夫婦脚本家による初の小説。書き下ろし短編「ひっつき虫」収録!

ふんわりとしていて心地いい空気感を味わえる。脱力感ともいうべき気張っていない力の抜き具合を見習いたいです。大切な人が周りにいる大切な今を大切に生きたいと強く思いました。のほほんとしている登場人物たちが愛おしいです。

透明カメレオン(道尾秀介)

ラジオパーソナリティの恭太郎は、素敵な声と冴えない容姿の持ち主。バー「if」に集まる仲間たちの話を面白おかしくつくり変え、リスナーに届けていた。大雨の夜、びしょ濡れの美女がバーに迷い込み、彼らは「ある殺害計画」を手伝わされることに。意図不明の指示に振り回され、一緒の時間を過ごすうち、恭太郎は彼女に心惹かれていく。「僕はこの人が大好きなのだ」。秘められた想いが胸を打つ、感涙必至のエンタメ小説。

個性豊かな登場人物たちが巻き起こすドタバタ劇。かと思いきや、さすが道尾秀介ともいうべき最後に待ち受けるどんでん返し。終盤の怒涛の展開は圧巻でした。ラストに待ち受ける優しい嘘に素直に感動。

ジェノサイド(高野和明)

イラクで戦うアメリカ人傭兵と、日本で薬学を専攻する大学院生。まったく無関係だった二人の運命が交錯する時、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。アメリカの情報機関が察知した人類絶滅の危機とは何か。そして合衆国大統領が発動させた機密作戦の行方は―人類の未来を賭けた戦いを、緻密なリアリティと圧倒的なスケールで描き切り、その衝撃的なストーリーで出版界を震撼させた超弩級エンタテインメント、堂々の文庫化!

ハラハラとドキドキが止まらない上質なエンターテイメントに出会うことが出来て大満足です。途中少し難解な部分も出てきますが間違いなく面白い作品。そこそこボリュームがあるのですが、全く気にならないほど没頭して読み進めてしまいました。壮大なスケールと手に汗握るスリリングな展開。最高です。

海の見える理髪店(荻原浩)

伝えられなかった言葉。忘れられない後悔。もしも「あの時」に戻ることができたら…。母と娘、夫と妻、父と息子。近くて遠く、永遠のようで儚い家族の日々を描く物語六編。誰の人生にも必ず訪れる、喪失の痛みとその先に灯る小さな光が胸に染みる家族小説集。

直木賞受賞作の短編集。家族を題材にした話が集まっています。直木賞の選考委員だった宮部みゆきが「圧倒的な読み心地の良さ」と評していましたが、本当にその通り。リズムよく流れるような文体がとても心地いい一冊です。淡々と穏やかに、そして優しい感動を与えてくれる作品ばかりです。

青の炎(貴志祐介)

櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との三人暮らし。その平和な家庭の一家団欒を踏みにじる闖入者が現れた。母が十年前、再婚しすぐに別れた男、曾根だった。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず妹にまで手を出そうとしていた。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意する。自らの手で曾根を葬り去ることを…。完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い。その哀切な心象風景を精妙な筆致で描き上げた、日本ミステリー史に残る感動の名作。

悲しくて切ないです。殺人を犯すまでの犯人の視点で描いているところが他のミステリーとは一線を画すところ。葛藤、選択、決断、全てがやるせなくもどかしい。何が正しくて何が間違っているのか、愚かでちっぽけな私には分からないけれど、とにかく犯人を応援してしまいました。タイトルも素晴らしいです。

舟を編む(三浦しをん)

出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!

1冊の辞書を作る編集部での人間ドラマ。辞書作りを通してコミカルに感動的なエンターテインメントを作り上げています。それこそ自分の中の辞書に載せておきたいような素敵な言葉も数多く登場。とても静かで熱い物語にジーンときます。

ソロモンの偽証(宮部みゆき)

クリスマス未明、一人の中学生が転落死した。柏木卓也、14歳。彼はなぜ死んだのか。殺人か。自殺か。謎の死への疑念が広がる中、“同級生の犯行”を告発する手紙が関係者に届く。さらに、過剰報道によって学校、保護者の混乱は極まり、犯人捜しが公然と始まった―。一つの死をきっかけに膨れ上がる人々の悪意。それに抗し、死の真相を求める生徒達を描く、現代ミステリーの最高峰。

先が気になってしかたない、ミステリーの醍醐味を味わうことが出来る作品。展開が遅い序盤はやきもきするかもしれませんが、進行が加速する中盤からはページをめくる手が止まりません。大長編だけあって、人物も多く、物語も複雑ですが、不思議と読みにくさや重たさは感じませんでした。

夜は短し歩けよ乙女(森見登美彦)

「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作。

独特なふわっふわとした物語の世界に引きずりこまれ、現実逃避をさせてくれる作品。ユーモアあふれる言い回しと個性的なキャラクター達が繰り出すテンポの良い会話劇が楽しいです。現実世界に疲れたときに嫌なことを忘れさせてくれます。不思議な雰囲気がやけにクセになります。

殺戮にいたる病(我孫子武丸)

永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。

高校生のころに読んで悶絶しました。10年以上たった今でもあのときの衝撃は忘れません。なかなかにグロテスクな描写が多いので、苦手な方はご注意を。どんでん返しが好きな人にはたまらないでしょう。あまり語ってしまうとネタバレになってしまうので、内容について触れられないのが歯がゆい。

スカイ・クロラ(森博詞)

僕はまだ子供で、ときどき、右手が人を殺す。その代わり、誰かの右手が、僕を殺してくれるだろう-。近未来を舞台に、戦闘機パイロットである「僕」の日常を描き、「死とは」の問いに挑む。

理系作家の代表各である森博詞の人気シリーズ一作目。押井守監督作品として映画化もしました。必要最低限な状況説明と淡々と進むストリー。体温を感じない無機質な文章から浮かび上がってくる美しい世界観に酔いしれます。ため息がでるほどに綺麗な文章にただただ浸ることができる貴重な一冊です。

アイネクライネナハトムジーク(伊坂幸太郎)

妻に出て行かれたサラリーマン、声しか知らない相手に恋する美容師、元いじめっ子と再会してしまったOL…。人生は、いつも楽しいことばかりじゃない。でも、運転免許センターで、リビングで、駐輪場で、奇跡は起こる。情けなくも愛おしい登場人物たちが仕掛ける、不器用な駆け引きの数々。明日がきっと楽しくなる、魔法のような連作短編集。

伊坂らしさ全開の小憎らしい短編集。何気ない日常の中に訪れる何気ない小さな奇跡に思わずニヤリとしてしまいます。一応恋愛ものにカテゴライズされるのだろうけれど、ただの恋愛小説という枠におさまらないというか、どうやったらこういったオシャレさを出せるのか。伊坂にしか書けない伊坂なりの恋愛に心躍ります。

GOTH(乙一)

森野夜が拾った一冊の手帳。そこには女性がさらわれ、山奥で切り刻まれていく過程が克明に記されていた。これは、最近騒がれている連続殺人犯の日記ではないのか。もしも本物だとすれば、最新の犠牲者はまだ警察に発見されぬまま、犯行現場に立ちすくんでいるはずだ。「彼女に会いにいかない?」と森野は「僕」を誘う…。人間の残酷な面を覗きたがる悪趣味な若者たち―“GOTH”を描き第三回本格ミステリ大賞に輝いた、乙一の跳躍点というべき作品。「夜」に焦点をあわせた短編三作を収録。

天才乙一の才能が爆発している短編集。猟奇的な殺人事件などのグロテスクな描写があるのですが、それでも軽やかに読めてしまいます。激しめな内容なのになぜか無機質な印象を持たせることが出来る稀有な作家。ミステリー初心者の方でも読みやすい不思議な魅力に溢れている作品です。

失はれる物語(乙一)

目覚めると、私は闇の中にいた。交通事故により全身不随のうえ音も視覚も、五感の全てを奪われていたのだ。残ったのは右腕の皮膚感覚のみ。ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見立て、日日の想いを演奏で伝えることを思いつく。それは、永劫の囚人となった私の唯一の救いとなるが…。表題作のほか、「Calling You」「傷」など傑作短篇5作とリリカルな怪作「ボクの賢いパンツくん」、書き下ろし最新作「ウソカノ」の2作を初収録。

切ない短編集です。ファンタジーやミステリー、普通の日常など様々なジャンルの話が詰まっています。ボリュームの割に非常に高い満足感を得ることが出来る1冊となっています。タイトルの「失はれる物語」とは裏腹に確実に読者の心の中に何かを残していきます。

十角館の殺人(綾辻行人)

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の七人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!’87年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作が新装改訂版で登場。

ミステリー好きなら読んでおいて損はない名作です。あまり内容に触れたくはないです、ネタバレになってしまうので。素晴らしい、やられたといった感じ。この感覚が味わえるからミステリーはたまらないです。とにかく読んでみてください、すごいから。

冷たい校舎の時は止まる(辻村深月)

雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう―。第31回メフィスト賞受賞作。

辻村深月のデビュー作。ダークな雰囲気漂う謎解きミステリーとなっています。デビュー作とは思えないほどの高いクオリティ。高校生たちの心情描写が非常に巧みで、それぞれのバックボーンも丁寧に描かれています。しっかりと伏線を回収してくるところも流石の一言。

氷菓(米澤穂信)

いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実―。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。

消極的な高校生の主人公が日常の不思議な謎を解決していく青春ミステリー。ほのぼのとしていて気軽に読めるのがいいですね。ガチガチな推理小説ではないですが、爽やかで少しおしゃれな会話劇を楽しむこともできます。

世界から猫が消えたなら(川村元気)

郵便配達員として働く三十歳の僕。ちょっと映画オタク。猫とふたり暮らし。そんな僕がある日突然、脳腫瘍で余命わずかであることを宣告される。絶望的な気分で家に帰ってくると、自分とまったく同じ姿をした男が待っていた。その男は自分が悪魔だと言い、「この世界から何かを消す。その代わりにあなたは一日だけ命を得る」という奇妙な取引を持ちかけてきた。僕は生きるために、消すことを決めた。電話、映画、時計…僕の命と引き換えに、世界からモノが消えていく。僕と猫と陽気な悪魔の七日間が始まった。二〇一三年本屋大賞ノミネートの感動作が、待望の文庫化!

猫が好きな私はタイトルに惹かれて購入してしまいました。ファンタジーでありながら淡々とした文体からかどこか現実的にも感じられます。哲学的なメッセージが込められた作品です。限られた人生を大切に生きなければと強く感じさせられました。テンポがよく軽い文体なため、とても読みやすかったです。

夏の庭―The Friends(湯本香樹実)

この世界には隠れているもの、見えないものがいっぱいあるんだろう。 死への興味から、生ける屍のような老人を「観察」し始めた少年たち。いつしか双方の間に、深く不思議な交流が生まれるのだが……。 町外れに暮らすひとりの老人をぼくらは「観察」し始めた。生ける屍のような老人が死ぬ瞬間をこの目で見るために。夏休みを迎え、ぼくらの好奇心は日ごと高まるけれど、不思議と老人は元気になっていくようだ――。いつしか少年たちの「観察」は、老人との深い交流へと姿を変え始めていたのだが……。喪われゆくものと、決して失われぬものとに触れた少年たちを描く清新な物語。

児童文学のようですが、完全に心を揺さぶられました。大人も十分に楽しむことが出来る作品だと保証します。「死」という現象は物語の中に組み込むことで感動を作り出すことが出来る要素です。しかし安易に死を使ってしまうと薄っぺらくチープな作品になってしまう諸刃の剣でもあります。この作品では死としっかりと向き合い、表面的ではない感動を生み出しています。

椿山課長の七日間(浅田次郎)

働き盛りの46歳で突然死した椿山和昭は、家族に別れを告げるために、美女の肉体を借りて七日間だけ“現世”に舞い戻った!親子の絆、捧げ尽くす無償の愛、人と人との縁など、「死後の世界」を涙と笑いで描いて、朝日新聞夕刊連載中から大反響を呼んだ感動巨編、待望の文庫化。

笑えて泣けるという言葉がぴったりな一冊。浅田次郎の作り出す人間味溢れるキャラクターがたまらないですね。人が死ぬということを悲観的にならず明るくコミカルに描いています。絶望的な気持ちに苛まれているときなどに読むと非常に救われた気持ちになれます。前向きでハートフルな作品です。

FINE DAYS(本多孝好)

余命いくばくもない父から、35年前に別れた元恋人を探すように頼まれた僕。別れたときには知らなかったが、彼女は父の子供を身ごもっていたという。複雑な気持ちで当時彼女が住んでいたアパートを訪ねた僕を待っていたのは、若き日の父と恋人だった…(「イエスタデイズ」より)。夢と現実のはざまを行き来するような読み心地で、心の深い場所に余韻を残す4編を収録。新世代の圧倒的共感を呼んだ、著者初の恋愛小説集。

重めのテーマを軽やかに受け入れさせてくれる不思議な雰囲気を醸し出す恋愛が詰まった短編集。奇妙でぞっとするような作品からほっこりするような話まで、様々な読後感を味わうことが出来ます。4編の短編がそれぞれの魅力を持っているバラエティに富んだ短編集となっています。

ハサミ男(殊能将之)

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作。

衝撃という快感を与えてくれる貴重なミステリーの名作。ネタバレを喰らうのがあまりにももったいないので何も調べず、先入観なしで読んでいただきたいです。

旅のラゴス(筒井康隆)

北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

文明のない世界を旅するSF作品。主人公ラゴスの紀行本ともいえるかもしれません。壮大でありながら独特な世界観に非常に引き込まれました。読み終わった後の満足感も素晴らしいです。しばらく余韻に浸りたくなります。空想の世界にワープすることが出来るという読書の醍醐味を思い出させてくれる一冊。

密室殺人ゲーム王手飛車取り(歌野晶午)

“頭狂人”“044APD”“aXe(アクス)”“ザンギャ君”“伴道全教授”。奇妙なニックネームの5人が、ネット上で殺人推理ゲームの出題をしあう。ただし、ここで語られる殺人はすべて、出題者の手で実行ずみの現実に起きた殺人なのである…。リアル殺人ゲームの行き着く先は!?歌野本格の粋を心して堪能せよ。

不謹慎で斬新な設定の中で推理を進めていくミステリー。残酷なのだけれど登場人物のキャラクターが面白いからなのかスラスラと読み進められました。歌野晶午らしく挑戦的な作品に仕上がっています。

ルーズヴェルト・ゲーム(池井戸潤)

大手ライバル企業に攻勢をかけられ、業績不振にあえぐ青島製作所。リストラが始まり、歴史ある野球部の存続を疑問視する声が上がる。かつての名門チームも、今やエース不在で崩壊寸前。廃部にすればコストは浮くが―社長が、選手が、監督が、技術者が、それぞれの人生とプライドをかけて挑む奇跡の大逆転とは。

企業スポーツの抱えている問題点や現状に頷きながら感動と興奮をもたらしてくれる作品。勧善懲悪のご都合主義ととらえる人もいるかもしれませんが、ベタは良いものだからベタなんですよ。読者にしっかりとストレスを与えた後にスカッと爽快な展開に進行してくれるのがとても気持ちがいいです。

第三の時効(横山秀夫)

殺人事件の時効成立目前。現場の刑事にも知らされず、巧妙に仕組まれていた「第三の時効」とはいったい何か!?刑事たちの生々しい葛藤と、逮捕への執念を鋭くえぐる表題作ほか、全六篇の連作短篇集。本格ミステリにして警察小説の最高峰との呼び声も高い本作を貫くのは、硬質なエレガンス。圧倒的な破壊力で、あぶり出されるのは、男たちの矜持だ―。大人気、F県警強行犯シリーズ第一弾。

ハードボイルドな人間ドラマとミステリーのどちらも非常に完成度が高い傑作です。警察内部のリアルな描写と個性が際立っている魅力的なキャラの心理描写が秀逸。作中の緊迫感がバンバン伝わってきて、最初から最後まで物語の中に没頭できる短編集。

告白(湊かなえ)

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!“特別収録”中島哲也監督インタビュー『「告白」映画化によせて』。

いまやイヤミスの女王と評されている湊かなえのデビュー作にして原点となっている作品。淡々としていて無機質な憎悪にゾクゾクとさせられます。人間の醜さを生々しく表現しています。登場人物の心情も丁寧に描写しているのが素晴らしい。静かな怒りと狂気に満ちている一冊です。

成功者K(羽田圭介)

芥川賞受賞後、TV出演190本。 すべてはこの作品のためだった。───羽田圭介 これは実話かフィクションか!? 芥川賞を受賞したKは、いきなりTVに出まくり寄ってくるファンや友人女性と次々性交する。 突如人生が変わってしまったKの運命は? 「胸糞面白い! 」「圧倒的怪作」「炎上必至。」など 全国書店員から興奮の声続々!

成功者となったKがとにかく女を抱きまくるという欲望に溢れたストーリー。フィクションにしてはリアルすぎるような気もするので実話に近いのではないかと勘繰ってしまいます。羽田圭介という作家の面白さ、魅力を知ることになった作品。多彩な作風で、どんなジャンルの話でも自分の色に変えて表現できるのはすごいことだなと思います。

罪の声(塩田武士)

「週刊文春」ミステリーベスト10 2016国内部門第1位! 第7回山田風太郎賞受賞作。 朝日新聞「天声人語」など各種メディアで紹介。 逃げ続けることが、人生だった。 家族に時効はない。今を生きる「子供たち」に昭和最大の未解決事件「グリ森」は影を落とす。 「これは、自分の声だ」 京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノートには英文に混じって製菓メーカーの「ギンガ」と「萬堂」の文字。テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだった――。 未解決事件の闇には、犯人も、その家族も存在する。 圧倒的な取材と着想で描かれた全世代必読! 本年度最高の長編小説。 昭和最大の未解決事件―「ギンガ萬堂事件」の真相を追う新聞記者と「男」がたどり着いた果てとは――。 気鋭作家が挑んだ渾身の長編小説。

グリコ・森永事件を扱っている作品です。どこからがフィクションでどこまでが事実なのか。その境界線がわからなくなるほど完全にのめりこんでしまいました。ドキュメント番組をみているかのようなドキドキとした緊迫感がたまらなかったです。圧倒的なリアリティを生み出す取材力と筆力に脱帽です。

海賊と呼ばれた男(百田尚樹)

一九四五年八月十五日、敗戦で全てを失った日本で一人の男が立ち上がる。男の名は国岡鐡造。出勤簿もなく、定年もない、異端の石油会社「国岡商店」の店主だ。一代かけて築き上げた会社資産の殆どを失い、借金を負いつつも、店員の一人も馘首せず、再起を図る。石油を武器に世界との新たな戦いが始まる。

こちらは日章丸事件を題材にしている作品。百田尚樹はやはり人の心を揺さぶることが出来る作家なんだなと確信しました。ひたむきに真っ直ぐに自分の信念を貫き通す男の姿にただただ感動。ドラマティックで熱量たっぷりの感動作です。

とにかくうちに帰ります(津村記久子)

うちに帰りたい。切ないぐらいに、恋をするように、うちに帰りたい―。職場のおじさんに文房具を返してもらえない時。微妙な成績のフィギュアスケート選手を応援する時。そして、豪雨で交通手段を失った日、長い長い橋をわたって家に向かう時。それぞれの瞬間がはらむ悲哀と矜持、小さなぶつかり合いと結びつきを丹念に綴って、働き・悩み・歩き続ける人の共感を呼びさます六篇。

西加奈子が書いていた帯に惹かれて購入。短編集です。ごく普通の一般的な職場で起きる些細な出来事が淡々と書かれているだけなのに何故か夢中になって読んでしまいました。普通は見逃してしまうような小さなポイントでも見逃さずに面白くとらえることが出来る着眼点があるというのは人生を豊かにするんだろうなと思いました。よくわからないけれど優しい気持ちになりました。

檸檬のころ(豊島ミホ)

保健室登校の女友達とのぎこちない友情。同級生と馴染めない、音楽ライター志望の偏屈な女子に突然訪れた恋。大好きな彼とさよならすることになっても、どうしても行きたかった、東京―。山と田んぼに囲まれた田舎の高校を舞台に、「あの頃」のかっこ悪くて、情けなくて、でもかけがえのない瞬間を切ないまでに瑞々しく綴る、傑作青春小説。

ある田舎町の高校を舞台にした短編集となっています。甘酸っぱくてほろ苦い青春の一ページを覗くことが出来る一冊。甘酸っぱいといっても甘さは控えめ。それぐらい酸っぱい。まさに檸檬のように。高校生ぐらいの年代に感じる不安感や葛藤、後悔を見事に表現している作品。

漁港の肉子ちゃん(西加奈子)

男にだまされた母・肉子ちゃんと一緒に、流れ着いた北の町。肉子ちゃんは漁港の焼肉屋で働いている。太っていて不細工で、明るい―キクりんは、そんなお母さんが最近少し恥ずかしい。ちゃんとした大人なんて一人もいない。それでもみんな生きている。港町に生きる肉子ちゃん母娘と人々の息づかいを活き活きと描き、そっと勇気をくれる傑作。

港に住んでいる肉子ちゃんと娘のキクリンのお話。西加奈子の独特な世界観が炸裂しています。今作でも恐ろしく魅力的なキャラクターを生み出しています。いつでも明るい肉子ちゃんに元気をもらいました。頭が良いとか容姿が優れているということなんて人にとってそこまで大切ではないのかもしれません。読み終わった後に優しい気持ちになれる作品です。

乱反射(貫井徳郎)

地方都市に住む幼児が、ある事故に巻き込まれる。原因の真相を追う新聞記者の父親が突き止めたのは、誰にでも心当たりのある、小さな罪の連鎖だった。決して法では裁けない「殺人」に、残された家族は沈黙するしかないのか?第63回日本推理作家協会賞受賞作。

細かいルールやマナー違反が大きな悲劇を生んでしまう。よくこんなストーリーを思いつくなと感心してしまいました。巧みで丁寧な人物描写がこの作品の面白さをさらに際立たせています。登場人物たちに嫌悪感を抱く中、自分自身を省みるきっかけにもなります。タイトルの付け方も秀逸。

きらきらひかる(江國香織)

私たちは十日前に結婚した。しかし、私たちの結婚について説明するのは、おそろしくやっかいである――。笑子はアル中、睦月はホモで恋人あり。そんな二人はすべてを許しあって結婚した、はずだったのだが……。セックスレスの奇妙な夫婦関係から浮かび上る誠実、友情、そして恋愛とは? 傷つき傷つけられながらも、愛することを止められないすべての人に贈る、純度100%の恋愛小説。

傍から見ていると変わっている関係性でも当人たちにとっては全然気にならない、むしろ幸せであるというのが心地よく感じました。普通だとか一般的だとか、マイノリティだからとかマジョリティだからとか、そういった実態の見えない怪物に立ち向かっていく物語だと思います。

4TEEN(石田衣良)

ぼくが怖いのは、変わることだ。 東京湾に浮かぶ月島。僕らは今日も自転車で、風よりも速くこの街を駆け抜ける――。14歳の永遠、その一瞬を切り取った青春小説。直木賞受賞作。 東京湾に浮かぶ月島。ぼくらは今日も自転車で、風よりも早くこの街を駆け抜ける。ナオト、ダイ、ジュン、テツロー、中学2年の同級生4人組。それぞれ悩みはあるけれど、一緒ならどこまでも行ける、もしかしたら空だって飛べるかもしれない――。友情、恋、性、暴力、病気、死。出会ったすべてを精一杯に受けとめて成長してゆく14歳の少年達を描いた爽快青春ストーリー。直木賞受賞作。

月島を舞台に中学生たちの青春が描かれている連作短編集です。思春期に抱えるもやもやとした悩みに自分たちのやり方で解決に導こうと頑張る少年たちの姿が眩しかったです。コイツのためになんとかしてやろうという仲間の関係性が素敵でした。重いテーマを清々しく読ませる筆力は流石です。

満願(米澤穂信)

「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが…。鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、全六篇を収録。史上初めての三冠を達成したミステリー短篇集の金字塔。山本周五郎賞受賞。

すべての話の完成度が高い、非常に満足感を感じる短編集。どんよりとしている話でもなぜか嫌な印象を受けないのが不思議です。登場人物たちの闇を感じさせる表現と捻りのきいたオチが素晴らしい。ミステリーやホラーが好きな方におすすめしたい作品です。

マリアビートル(伊坂幸太郎)

幼い息子の仇討ちを企てる、酒びたりの元殺し屋「木村」。優等生面の裏に悪魔のような心を隠し持つ中学生「王子」。闇社会の大物から密命を受けた、腕利き二人組「蜜柑」と「檸檬」。とにかく運が悪く、気弱な殺し屋「天道虫」。疾走する東北新幹線の車内で、狙う者と狙われる者が交錯する――。小説は、ついにここまでやってきた。映画やマンガ、あらゆるジャンルのエンターテイメントを追い抜く、娯楽小説の到達点!

伊坂の殺し屋シリーズ第二弾。殺し屋だらけの新幹線の車内で巻き起こる怒涛の展開に釘付けになります。こんなにワクワクする設定のエンタメ作品も珍しい。伊坂の持ち味であるシャレた会話劇も健在。グラスホッパーの続編的な位置づけですが、単体作品としても楽しめます。

占星術殺人事件(島田荘司)

密室で殺された画家が遺した手記には、六人の処女の肉体から完璧な女=アゾートを創る計画が書かれていた。その後、彼の六人の娘たちが行方不明となり、一部を切り取られた惨殺遺体となって発見された。事件から四十数年、迷宮入りした猟奇殺人のトリックとは!?名探偵御手洗潔を生んだ衝撃作の完全版登場!

新感覚な本格ミステリー。素晴らしく鮮やかなトリックに驚愕すること間違いなし。デビュー作でこれほど完成度の高い作品を生み出すとは。島田荘司おそるべし。

しゃべれどもしゃべれども(佐藤多佳子)

俺は今昔亭三つ葉。当年二十六。三度のメシより落語が好きで、噺家になったはいいが、未だ前座よりちょい上の二ツ目。自慢じゃないが、頑固でめっぽう気が短い。女の気持ちにゃとんと疎い。そんな俺に、落語指南を頼む物好きが現われた。だけどこれが困りもんばっかりで…胸がキュンとして、思わずグッときて、むくむく元気が出てくる。読み終えたらあなたもいい人になってる率100%。

落語、噺家を題材にした作品。不器用で個性的な登場人物たちがとても魅力的です。喋りに自信がない人が落語を教えてもらい、様々な問題に向き合っていく。やはり一生懸命に真剣に問題を乗り越えようとする姿は人の心を打ちますね。

13階段(高野和明)

犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。2人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。

死刑という重いテーマながら読みやすく、それでいて重厚感のある読み応えたっぷりな一冊です。上質なミステリーとリアルで緻密な人間ドラマが素晴らしい。フィクションだということを忘れて本の世界に入り込んでしまいました。

まほろ駅前多田便利軒(三浦しをん)

まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生・行天春彦がころがりこんだ。ペットあずかりに塾の送迎、納屋の整理etc.―ありふれた依頼のはずがこのコンビにかかると何故かきな臭い状況に。多田・行天の魅力全開の第135回直木賞受賞作。

便利屋のお話。爽やかで温かくて、ところどころに深みを感じます。主人公2人のキャラクターが魅力的。2人の掛け合いが作る空気感が優しくて素敵です。

新世界より(貴志祐介)

1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力」を得るに至った人類が手にした平和。念動力の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた…隠された先史文明の一端を知るまでは。

大ボリュームのSF作品。かなり長い作品ですが、途中からはほとんど一気読み。グイグイ引き込まれていきました。そして衝撃のラスト。ファンタジーなのに現実感を漂わせる筆力は流石です。

深夜特急(沢木耕太郎)

インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗合いバスで行く―。ある日そう思い立った26歳の〈私〉は、仕事をすべて投げ出して旅に出た。途中立ち寄った香港では、街の熱気に酔い痴れて、思わぬ長居をしてしまう。マカオでは、「大小」というサイコロ博奕に魅せられ、あわや…。1年以上にわたるユーラシア放浪が、今始まった。いざ、遠路2万キロ彼方のロンドンへ。

20年も前の作品でありながら今も色あせない名作。異国への旅を情緒たっぷりに魅力的に描写しています。バックパッカーのバイブル的な本。

ペンギン・ハイウェイ(森見登美彦)

小学四年生のぼくが住む郊外の町に突然ペンギンたちが現れた。この事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、その謎を研究することにした。未知と出会うことの驚きに満ちた長編小説。

独特な淡い世界観がたまらないファンタジー小説。一人の少年の成長の瞬間を見ることが出来ます。ラストには思わず心を揺さぶられてしまいました。タイトルもいいですね。

ガダラの豚(中島らも)

アフリカにおける呪術医の研究でみごとな業績を示す民族学学者・大生部多一郎はテレビの人気タレント教授。彼の著書「呪術パワー・念で殺す」は超能力ブームにのってベストセラーになった。8年前に調査地の東アフリカで長女の志織が気球から落ちて死んで以来、大生部はアル中に。妻の逸美は神経を病み、奇跡が売りの新興宗教にのめり込む。大生部は奇術師のミラクルと共に逸美の奪還を企てるが…。超能力・占い・宗教。現代の闇を抉る物語。まじりけなしの大エンターテイメント。日本推理作家協会賞受賞作。

様々な要素がごちゃまぜに詰め込まれたような圧倒的なエンタメ作品。コミカルな雰囲気でテンポもよく、スルスルと頭の中にストーリーが入ってきます。強烈な世界観とドタバタした展開にページをめくる手が止まりません。

ファミレス(重松清)

中学校教師の宮本陽平は、子どもたちが家を出て、妻・美代子との初めての二人暮らしに困惑中。ある日陽平は、美代子の署名入りの離婚届を見つけてしまう。彼女は離婚を考えているのか?唯一の趣味である料理を通じた友人の一博と康文は、様子のおかしい陽平を心配するが、彼らの家庭も順風満帆ではなく…。「人生とは、腹が減ることと、メシを食うことの繰り返し」。50歳前後の料理好きオヤジ3人を待っていた運命とは?

重松清にしては珍しくドタバタ感の強い作品。一生懸命に家族のことに奔走するオジサン達の姿が愛おしいです。中年の哀愁を描かせたら重松清の右に出るものはいないですね、読後には無性にファミレスに行きたくなります。

とっぴんぱらりの風太郎(万城目学)

天下は豊臣から徳川へ。度重なる不運の末、あえなく伊賀を追い出され、京でぼんくらな日々を送る“ニート忍者”風太郎。その運命は一個の「ひょうたん」との出会いを経て、大きくうねり始める。時代の波に呑みこまれる風太郎の行く先に漂う、ふたたびの戦乱の気配。めくるめく奇想の忍び絵巻は、大坂の陣へと突入する!

魅力溢れるキャラクターが登場する忍者物語。コメディ作品かと思いきや意外にもシリアス。大ボリュームの長編ながら万城目学持ち前の軽妙さで最後までサラッと読めてしまいます。

奪取(真保裕一)

偽札をつくりあげた者が勝利者となる!傑作長編 1260万円。友人の雅人がヤクザの街金にはめられて作った借金を返すため、大胆な偽札作りを2人で実行しようとする道郎・22歳。パソコンや機械に詳しい彼ならではのアイデアで、大金入手まであと一歩と迫ったが…。日本推理作家協会賞と山本周五郎賞をW受賞した、涙と笑いの傑作長編サスペンス!

偽札作りを題材にした作品。最初から最後までテンポよくスピーディーに物語が進行していきます。読者はただその流れに乗っていけば最高の読書体験ができることでしょう。

エヴェレスト 神々の山嶺(夢枕獏)

1924年、世界初のエヴェレスト登頂を目指し、頂上付近で姿を消した登山家のジョージ・マロリー。登攀史上最大の謎の鍵を握る、マロリーのものと思しき古いコダックを手に入れた写真家の深町誠だが、何者かにカメラを盗まれる。行方を追ううち、深町は孤高の登山家・羽生丈二に出会う。羽生が狙うのは、エヴェレスト南西壁、前人未到の冬期無酸素単独登攀だった。山に賭ける男たちを描いた、山岳小説の金字塔、待望の合本版。

エヴェレストに挑み続ける登山家の姿を描いた傑作。漫画でも小説でも山を題材にした作品にはハズレがないと個人的には思っております。この作品も最高に楽しませてくれました。山に魅せられた男たちのカッコよさが存分に伝わってきます。

盤上の向日葵(柚月裕子)

さいたま市天木山山中で発見された白骨死体。唯一残された手がかりは初代菊水月作の名駒のみ。それから4ヶ月、叩き上げ刑事・石破と、かつて将棋を志した若手刑事・佐野は真冬の天童市に降り立つ。向かう先は、世紀の一戦が行われようとしている竜昇戦会場。果たしてその先で二人が目撃したものとは! ? 日本推理作家協会賞作家が描く、渾身の将棋ミステリー!

将棋を題材にした傑作長編。ミステリーというよりも一人の天才棋士の人生に寄り添うような作品。読み応え抜群。もちろん将棋が分からない人でも楽しめます。

検察側の罪人(雫井脩介)

蒲田の老夫婦刺殺事件の容疑者の中に時効事件の重要参考人・松倉の名前を見つけた最上検事は、今度こそ法の裁きを受けさせるべく松倉を追い込んでいく。最上に心酔する若手検事の沖野は厳しい尋問で松倉を締め上げるが、最上の強引なやり方に疑問を抱くようになる。正義のあり方を根本から問う雫井ミステリー最高傑作!

正義とは何なのか。正しいとはどういうことなのか。様々なことを考えさせられる作品です。読後には何とも言えない気持ちになります。

犯人に告ぐ(雫井脩介)

闇に身を潜め続ける犯人。川崎市で起きた連続児童殺害事件の捜査は行き詰まりを見せ、ついに神奈川県警は現役捜査官をテレビニュースに出演させるという荒技に踏み切る。白羽の矢が立ったのは、6年前に誘拐事件の捜査に失敗、記者会見でも大失態を演じた巻島史彦警視だった―史上初の劇場型捜査が幕を開ける。第7回大藪春彦賞を受賞し、「週刊文春ミステリーベストテン」第1位に輝くなど、2004年のミステリーシーンを席巻した警察小説の傑作。

凄まじい臨場感と緊迫感にハラハラとしながらグイグイ引き込まれるエネルギーを持った作品。興奮する分、読後の満足感と疲労感も凄まじい一冊です。

儚い羊たちの祝宴(米澤穂信)

夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。

最高のミステリー作品が集まっている最強の短編集です。コンセプトは「ラストの一行で全てが反転」。これ以上ない快感を味わえる傑作。

ウォッチメイカー(ジェフリー・ディーヴァー)

“ウォッチメイカー”と名乗る殺人者あらわる。手口は残忍で、いずれの現場にもアンティークの時計が残されていた。やがて犯人が同じ時計を10個買っていることが判明、被害者候補はあと8人いる―尋問の天才ダンスとともに、ライムはウォッチメイカー阻止に奔走する。2007年度のミステリ各賞を総なめにしたシリーズ第7弾。

ジェフリー・ディーヴァーの人気シリーズの中でも特に最高傑作と評されている作品。クライマックスに近づくにつれて加速する怒涛の展開は圧巻です。これは凄い。

教場(長岡弘樹)

希望に燃え、警察学校初任科第九十八期短期過程に入校した生徒たち。彼らを待ち受けていたのは、冷厳な白髪教官・風間公親だった。半年にわたり続く過酷な訓練と授業、厳格な規律、外出不可という環境のなかで、わずかなミスもすべて見抜いてしまう風間に睨まれれば最後、即日退校という結果が待っている。必要な人材を育てる前に、不要な人材をはじきだすための篩。それが、警察学校だ。週刊文春「二〇一三年ミステリーベスト10」国内部門第一位に輝き、本屋大賞にもノミネートされた“既視感ゼロ”の警察小説、待望の文庫化!

警察学校を舞台にしたミステリー短編集。圧倒的なリアリティと巧みな構成力はお見事。今までになかった新しい形の警察小説です。

天地明察(冲方丁)

四代将軍家綱の治世、ある事業が立ちあがる。それは日本独自の暦を作ること。当時使われていた暦は正確さを失いずれが生じ始めていた--。日本文化を変えた大計画を個の成長物語として瑞々しく重厚に描く時代小説!

日本独自の暦を作る渋川春海を描いた時代物。歴史にはあまり興味がないのですが文句なしに面白かったです。物語の起伏がポイントで設けられており、中だるみすることなく最後まで一気読み。

破門(黒川博行)

第151回直木賞を受賞した、エンタメ小説の最高峰。映画製作への出資金を持ち逃げされたヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮。失踪したプロデューサーを追い、桑原は本家筋の構成員を病院送りにしてしまう。組同士の込みあいをふたりは切り抜けられるのか

シリーズ物の明るい雰囲気のハードボイルド小説。テンポの良い関西弁での会話劇が心地いいです。痛快なドタバタ劇が楽しい王道のエンターテインメントに仕上がっています。

64(横山秀夫)

元刑事で一人娘が失踪中のD県警広報官・三上義信。記者クラブと匿名問題で揉める中、“昭和64年”に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件への警察庁長官視察が決定する。だが被害者遺族からは拒絶され、刑事部からは猛反発をくらう。組織と個人の相克を息詰まる緊張感で描き、ミステリ界を席巻した著者の渾身作。

警察小説を書かせたら右に出る者はいない横山秀夫の最高傑作。実在している人物なのかと思うほどの緻密な心情描写が素晴らしいです。重苦しいストーリーながら先が気になってどんどん読み進めてしまいます。

人体模型の夜(中島らも)

一人の少年が「首屋敷」と呼ばれる薄気味悪い空屋に忍び込み、地下室で見つけた人体模型。その胸元に耳を押し当てて聞いた、幻妖と畏怖の12の物語。18回も引っ越して、盗聴を続ける男が、壁越しに聞いた優しい女の声の正体は(耳飢え)。人面瘡評論家の私に男が怯えながら見せてくれた肉体の秘密(膝)。眼、鼻、腕、脚、胃、乳房、性器。愛しい身体が恐怖の器官に変わりはじめる、ホラー・オムニバス。

様々なカテゴリーのホラー要素が詰め込まれている短編集です。個性的な語り口と斬新な斬り口から作者のセンスを感じさせます。収録されている12編全てが強烈なものばかりです。

永遠の出口(森絵都)

小さい頃、私は「永遠」という言葉にめっぽう弱い子供だった――。10歳から18歳まで。ナイーブでしたたかで、どこにでもいる普通の少女、紀子の成長をめぐる、きらきらした物語。

一人の女の子「紀子」の小学生から高校生までの9年間を描いている連作短編集。思春期に感じるモヤっとした感情を見事に表現しています。悩みや葛藤に苦しむ紀子の姿に感情移入せざるを得ませんでした。読みやすい文章でスッと入り込めます。

我が家の問題(奥田英朗)

夫は仕事ができないらしい。それを察知してしまっためぐみは、おいしい弁当を持たせて夫を励まそうと決意し―「ハズバンド」。新婚なのに、家に帰りたくなくなった。甲斐甲斐しく世話をしてくれる妻に感動していたはずが―「甘い生活?」。それぞれの家族に起こる、ささやかだけれど悩ましい「我が家の問題」。人間ドラマの名手が贈る、くすりと笑えて、ホロリと泣ける平成の家族小説。

家シリーズ第2弾。前作に続いてこちらも最高の仕上がり。普通の家庭の普通の話を書いているだけなのにどうしてこんなに面白いのか。奥田英朗の筆力の凄まじさを思い知る。特に「夫とUFO」と「妻とマラソン」は胸が熱くなります。

フェルマーの最終定理(サイモン・シン)

17世紀、ひとりの数学者が謎に満ちた言葉を残した。「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」以後、あまりにも有名になったこの数学界最大の超難問「フェルマーの最終定理」への挑戦が始まったが―。天才数学者ワイルズの完全証明に至る波乱のドラマを軸に、3世紀に及ぶ数学者たちの苦闘を描く、感動の数学ノンフィクション。

数学が苦手な私でも最高に楽しめました。天才数学者達の情熱をひしひしと感じる人間ドラマ。感動的で壮大なスケールの物語にロマンを感じました。子供の時に読んでいればもっと数学を頑張ったに違いないのに。

星を継ぐもの(ジェイムズ・P・ホーガン)

月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作。

ワクワクが止まらない壮大なSF作品。フィクションであることを忘れるくらい没頭してしまいました。SFとしてもミステリーとしてもめちゃくちゃ面白いです。

阪急電車(有川浩)

隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった…。片道わずか15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。恋の始まり、別れの兆し、途中下車―人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。ほっこり胸キュンの傑作長篇小説。

タイトルの通りに阪急電車の中で起こる様々な人間ドラマを描いている作品です。世の中には生きている人の分だけドラマがあるということを再認識。テンポがよく、全体の構成も素晴らしいです。心地よい読後感を味わえる一冊。

武士道シックスティーン(誉田哲也)

「ようするにチャンバラダンスなんだよ、お前の剣道は」剣道エリート、剛の香織。「兵法がどうたらこうたら。時代錯誤もいいとこだっつーの」日舞から転身、柔の早苗。相反するふたりが出会った―。さあ、始めよう。わたしたちの戦いを。わたしたちの時代を。新進気鋭が放つ痛快・青春エンターテインメント、正面打ち一本。

剣道を題材にした青春小説。性格が正反対の二人の少女が、それぞれに影響を受けて悩んで成長していく姿が愛おしい。これぞ青春。若いっていいなあ。

悪意(東野圭吾)

人はなぜ人を殺すのか。 東野文学の最高峰。 人気作家が仕事場で殺された。第一発見者は、その妻と昔からの友人だった。 逮捕された犯人が決して語らない「動機」とはなんなのか。 超一級のホワイダニット。 加賀恭一郎シリーズ

東野圭吾の天才っぷりが存分に発揮されている作品。犯人探しではなく、動機の追及に焦点を当てて進行していくミステリー。最後に待ち受けるどんでん返しがたまりません。最後の最後まで作者の手の上で弄ばれてしまいます。

サクリファイス(近藤史恵)

ぼくに与えられた使命、それは勝利のためにエースに尽くすこと――。陸上選手から自転車競技に転じた白石誓は、プロのロードレースチームに所属し、各地を転戦していた。そしてヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。アシストとしてのプライド、ライバルたちとの駆け引き。かつての恋人との再会、胸に刻印された死。青春小説とサスペンスが奇跡的な融合を遂げた! 大藪春彦賞受賞作。

ロードレースとミステリーを見事なまでに融合させた傑作。ロードレースさながらのテンポの良さと疾走感でグイグイ引き込んできます。ロードレースならではの競技の特色を上手く引き出すことに成功しています。本屋大賞2位は伊達じゃない。

オリンピックの身代金(奥田英朗)

小生 東京オリンピックのカイサイをボウガイします―兄の死を契機に、社会の底辺ともいうべき過酷な労働現場を知った東大生・島崎国男。彼にとって、五輪開催に沸く東京は、富と繁栄を独占する諸悪の根源でしかなかった。爆破テロをほのめかし、国家に挑んだ青年の行き着く先は?吉川英治文学賞受賞作。

緊迫感にハラハラとしながら楽しむことが出来る一冊。1964年の東京オリンピックを舞台に、当時の時代背景を巧みに描写しながら読者を物語の中に引きずり込んでいきます。ページ数の多さが全く気にならない、一気読み必至の名作です。

家族八景(筒井康孝)

幸か不幸か生まれながらのテレパシーをもって、目の前の人の心をすべて読みとってしまう可愛いお手伝いさんの七瀬――彼女は転々として移り住む八軒の住人の心にふと忍び寄ってマイホームの虚偽を抉り出す。人間心理の深層に容赦なく光を当て、平凡な日常生活を営む小市民の猥雑な心の裏面を、コミカルな筆致で、ペーソスにまで昇華させた、恐ろしくも哀しい本である。

緻密で繊細な心理描写が素晴らしい短編集です。様々な登場人物たちの醜く、黒い一面を粘っこく描いています。まあ人間ってこんなもんだよなと気軽に読むことをおすすめします。

あと少し、もう少し(瀬尾まいこ)

陸上部の名物顧問が異動となり、代わりにやってきたのは頼りない美術教師。部長の桝井は、中学最後の駅伝大会に向けてメンバーを募り練習をはじめるが…。元いじめられっ子の設楽、不良の大田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、後輩の俊介。寄せ集めの6人は県大会出場を目指して、襷をつなぐ。あと少し、もう少し、みんなと走りたい。涙が止まらない、傑作青春小説。

これぞ青春小説。駅伝に挑戦する即席の中学生達の青臭さと瑞々しさに完全にノックダウンされます。駅伝の出走順に語り手が受け継がれていくという見事な構成は天晴れ。悩んで、もがいて、それでも前を向いて仲間と共に懸命に走る中学生の姿に心を打たれます。

怪笑小説(東野圭吾)

年金暮らしの老女が芸能人の“おっかけ”にハマり、乏しい財産を使い果たしていく「おつかけバアさん」、“タヌキには超能力がある、UFOの正体は文福茶釜である”という説に命を賭ける男の「超たぬき理論」、周りの人間たちが人間以外の動物に見えてしまう中学生の悲劇「動物家族」…etc.ちょっとブラックで、怖くて、なんともおかしい人間たち!多彩な味つけの傑作短篇集。

ブラックユーモア溢れる短編が詰まった一冊。東野圭吾という天才作家の引き出しの豊富さを見せ付けられます。思わずニヤニヤとしてしまうような話ばかりです。他の「○○笑」シリーズも面白いのでぜひ。

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